1月11日東京ビックサイト国際会議場で行われたSTS-92若田宇宙飛行士帰国報告会に筆者も出席しましたのでその模様を簡単に報告します。
定刻5時30分に開始された報告会は、まず主催者の挨拶で始まりました。最初にビデオでSTS-92の概要を説明がありその後、若田飛行士が司会者に招かれて客席後部から登場してゲスト2名を含めた4人のトークで行われました。ビデオの音声や会話は手話通訳されていました。1000名収容の客席は8割ぐらいうまっていました。折りしもこの日、1月11日は若田飛行士が宇宙に初飛行した1回目のSTS-72の打ち上げからちょうど5年目の記念日にあたるそうです。 NASDAサイトの記事。受け付けの写真の手前から3番目の男性は私です。ビックリしました! 以下は筆者がまとめたトーク内容です。 ロボットアームについて シャトルのロボットアームよりも現在日本の最先端技術で使われるロボットアームのほうが性能は上で、これは宇宙では過酷な環境で使われるので信頼と実績のある少し古い技術が採用されるためだそうです。地上のロボットアームは油圧駆動ですが、宇宙では電気モーター駆動です。これは宇宙では自重がないのでトルクを多く必要としないからだそうです。ロボットアーム操作の訓練はJSCで3年間VR(バーチャルリアリティー訓練装置)を使って行ったそうです。宇宙から帰還してすぐにもう一度VRを使ってみて実際との違いを検証するそうですが、VRは実際の感覚とほとんど同じだったそうです。 電気系統トラブルについて その時の気持ちは? 訓練の9割はトラブル対策で、当然SVS(スペース・ビジョン・システム)が使えない場合の訓練も行っていたので、シュミレーション訓練を行っているようで落ち着いていたということです。 ザ・マンと呼ばれる秘訣は? 2度目の間違いを起こさないように訓練すること。過ちをいかに教訓とするかだそうです。 ユニティー・モジュールで一泊したの? シャトルのミッドデッキは窮屈ですが、ユニティー・モジュールは余裕があり空調の音も静かで安眠でき、寝袋に入って寝たそうです。睡眠時間はヒューストンの昼夜に合わせてあるそうです。 ISS内部の感覚について 床はどう感じるの? ISSは対称系にできていて、瞬間で見るとどちらが上下か分からない。足がついている方が床と感じる。シャトルは非対称なので瞬間で見ても上下が判断できる。 宇宙ではどんな夢を? 1回目の飛行の時は、SFUについているはずのピンがない夢を見た。今回の飛行はリラックススして宇宙に1人漂っている夢をみた。 ISSの内部の色について? アメリカのユニティーモジュールはサーモンピンクをロシアのザーリャモジュールはグレイとグリーンを基調としている。国の特色を出しているが優しい色が快適感につながると思う。 太陽放射について 太陽からの荷電粒子によってISSは電位差が生じ放電するようになる。これを防ぐためにZ1トラスにはプラズマ生成ユニットが設けられている。 ISSは国境がない 16カ国とういう数の国が参加する科学プロジェクトはこれが初めてです。今後宇宙開発に対する人間の考え方は変わってていくでしょう。例えば宮古島噴火の警報など、宇宙開発が人命を救うことになります。 宇宙飛行について 学生の時に立花隆の「宇宙からの帰還」を呼んで感銘した。今回のフライトで強く感じたのは、いま火星など他惑星の探査を行っている一方でこの青い故郷地球を守っていかなければならないということでした。宇宙は童謡の「ふるさと」がよく似合います。今回のビデオにこの曲を挿入したのも若田さんの希望だったそうです。今は、宇宙飛行は工学系の人が多いが、これからは色んな分野の人が宇宙に行って宇宙文化が生まれるでしょう。 宇宙に行くためのトレーニングは何が必要? 健康であれば宇宙に行けますが、宇宙で何をするか考えることが必要です。何をしたいかこの分野では誰にも負けないという好奇心が必要です。 以下は会場からの質問と若田飛行士の回答です。 「STS-92の打ち上げが遅れた1週間は何をしてたの?」10才 何も寝ていたわけではありません。隔離された専用宿舎で作業手順の再確認をして過ごしていました。 「中国が有人飛行を目指しているが日本の有人飛行計画は?」16才 ISSの「きぼう」が日本の初の有人施設となります。ここで実績を積めば日本の有人宇宙計画も次のステップに進めると思います。 「日本が火星へ有人計画を行うとしたら費用はいくら?」11才 ものすごくかかる! 1つの国ではまず無理で国際協力が必要となるでしょう。 「宇宙では当番が決まっているの?」 ISSの3人のクルーは、炊事や掃除を分担しています。シャトルのクルーもトイレ掃除は順番ですが、炊事は作業のない人が行います。カードに書いたメニューから各自が食べたくないものを線で消します。 宇宙飛行士になった動機は? 宇宙にあこがれを持ったのは5歳の時にアポロの月面着陸を見て。宇宙飛行士は旧ソ連やアメリカがやっていて雲の上の存在というイメージを持っていた。それより飛行機に興味をもっていてどうやったら飛ぶのかと考えていた。学生時代は航空学を学んだ。NASDAがISS建設の募集を行ったとき科学者でなくても応募できるということ応募したが受かるとは夢にも思っていなかった。宇宙飛行士の応募という山に出会ったことが宇宙飛行士になったきっかけでした。 STS-92の半日の休憩時間は何をしたの?13才 気象の関係で地球帰還が遅れた分多く休憩時間が取れました。この間、 地球をじっくり眺めました。地球は青く本当に水の惑星であることを感じました。地球が見せる夜と昼の表情は違います。昼は大自然の営みの強さを感じさせ、夜は電球をちりばめた光が人間の科学技術の強さを感じさせます。地球の夕暮れの地平線上空を見ると大気圏が雲の高さの数倍の厚さまであるのがわかります。大気が地球をやさしく包んで守っているのがよくわかります。 宇宙の外側は何ですか?7才 これは難しい質問です。宇宙は150億歳と言われていますが、宇宙の外側は分かっていません。宇宙は膨張を続けるのか、ある時点で縮み始めるのか膨張を止めるのか分かっていません。でも研究が続けられ、いつかは分かると思います。 人間とロボットの共存について ロボットだらけになったら人間は機会に使われることになるでしょう。どこまでロボットでどこまで人間がやるか切り分けをしっかり考えていなければなりません。予想のつかないことへの対応つまりトラブルの対応は人間しかできません。人間は機会ができないことをやる、これが人間とロボットの共存につながるでしょう。 グッド・スピリット! ザ・マン! |