98年しし座流星群はbust(失敗)か blast(出発)か?

専門家もアマチュアも花火ショーに感動しました

-20 magnitude fireball over Hong Kong 11. 27. 1998:  1998年11月17日の香港の夜は、特別でした。  寒冷前線が通り抜けたばかりの空は晴れ渡り、シーイングは素晴らしいものでした。香港天文協会のメンバーの1人は、それを「この10年で香港最高の夜」と呼びました。
香港や世界の他の場所でスカイウォッチャー達が、しし座流星の魅惑にもてなされていた時は、それは最高の時間に起こったのではありませんでした。

: この唖然とするほどのマイナス20等級の火球は、11月16日香港上空で2025(世界時)頃に爆発したものです。これは、香港天文協会のCharanis Chiuがフィルムに収めました。火球のもっと多くの写真は、 Leonids Live! photo galleryにあります。

 1998年のしし座流星のピークは、最高でも1時間につき500個で、1時間につき数千個が雨のように流れた1966年のしし座嵐よりはるかに下回りました。

しかし数の不足をまぶしさで補いました。珍しい事に、マイナス3等級の火球が流れる率が高かったのです。いくつかはその明るさの為に影ができる程でした。

 「それは、私がこれまでに見た最も素晴らしい流星の光景でした。」と一時間に450個の流星を数えたObservatoire De Niceで観測を行ったブレットGladmanは語りました。



上図: 1998年のしし座流星の多くは非常に明るく日中の空でも見える程でした。この写真は香港の早朝に撮られた1枚です。この写真は、Yan On Sheung によって1998年11月16日2200世界時に撮られました。

 火球を作り出す流星体は、通常の流星を作る流星体と本質的に違いはありません。 それらは単により大きく(通常は1ミリメートルより大きく)て、思った感じとは逆に、ゆっくりと流れます。
 多くの科学者達は、非常に高速で飛ぶ流星体は、空気が薄い高層大気圏でより小さな流星体へとバラバラに壊れると考えています。小さい断片は、空気の薄い所では明るい光跡を作ることなく燃えてしまいます。ゆっくり飛ぶ流星体は、明るい流星または火球になる大気の濃い領域まで壊れる事なく突き抜けてきます。
a Leonids fireball over Hong Kong.  Photo by
Ben Wong しし座の流星体は、普通の流星体よりはるかに速いおよそ72 km/s(158,000 mph)で大気に衝突します。もし火球がゆっくり飛ぶ流星体で引き起こされるならば、なぜ、高速で飛ぶしし座の流星体で火球が生まれるのでしょうか?

 天文学者トニー・フィリップス博士は、「彗星テンペルタットル彗星(しし座の母彗星)からの破片流は多分もともと、平均よりも大きな流星体を多く含んでいるのだろう。それで高速のしし座流星体が高層大気圏でバラバラになり、その破片が低い大気層に入って来ても破片自体がまだ火球を作るだけの十分な大きさで残っているのではないか。」と考えました。

左図: An 17/11/98香港Sai Kung ogでベン・ウォンによって撮られた爆発している流星の写真。現地時間午前3時30分頃。火球より上に見えるのは2番目の流星。

もし火球が、およそ50 kmの高度の成層圏にまで突き抜けてきて爆発するならば、地上でそのソニック・ブームが聞こえるチャンスがあります。

 そのような事はまれですが、しし座流星の2つのソニック・ブームが Science@NASAで報告されています。

テキサス州オースティンのマイク・スティールがこの事を説明します:
「11月17日午前6時12分 CST(部分的な薄明)に、私は赤黄色で最後には明るく閃光した大きな火球を見ました。しばらくして(多分30-45秒後)、長いとどろきとこだまが同じ方向からありました。その音は、遠くからの雷鳴または衝撃音のようでした。」
別の読者のブラジルのPaulo Mansur Raymundo も、明らかに火球によって発せられた大きい音を聞きました:
「私は、そのような大変な光景を目撃してうれしかったです....マイナス13等級の青っぽい火球が大西洋に自身の影を落としながら、その痕は2分以上も残りました。 ........忘れられない。ソニック・ブームは8分後に聞きましたが、火球に関係しているのかは確信できません。」
ブラジル上空のしし座流星群

これらの写真は、パウロRaymundoによって11月17日0717世界時にブラジルBahiaで撮影されました。画像は空が青く写っていますが、写真は実際は夜に撮られたものです。最初の画像には、フレーム内にマイナス13等級の火球が一部だけ写っています。それはあまりに明るく輝いたので、空が昼間のように明るくなったのです。
fireball over Brazil

2枚目の画像には、2分後に残った煙痕が写っています。右上にオリオンのベルトと剣が見えます。

the smoke trail, 2 minutes later

火がある所には煙がある

 アメリカ流星学会によると、火球はその後に2種類の痕を残します: 「尾」タイプの痕と「煙痕」タイプの痕です。尾タイプは、イオン化ガスが白熱して痕を残すもので、数分間あるいは半時間も持続する事があります。長くのこる尾タイプは、地上およそ100キロメートル上空で吹きつける風によって時間と共にその形を変えていきます。

アイオワと香港上空の火球の痕
1998年11月17日の朝の午前2時30分頃アイオワ州ウインターセット近くで、1時間につき150+個の流星が流れたピークの間、しし座流星のこの煙の残りが、空に10分間かかりました!第二の流星が、露出時間内に撮影範囲を通り抜けているのが見られます。デモイン天文協会のトム・ベイリーによる写真です。
 この美しい痕は、マイナス20等級の大きさの火球が爆発した数分後に、香港天文協会のAlvis Koによってフィルムに収められました。 この写真は、1998年11月16日2030UT頃に撮られました。 同じ痕が、別の香港の天文写真家ルビーLeungさんによって撮られました。 彼女の写真は、Leonids Live! photo galleryにあります。

 第二の種類の痕は、煙痕と呼ばれます。煙痕は、流星体が大気中を飛ぶときに摩擦によってはぎとられた非発光性の粒子から成っています。(このプロセスは、アブレーションと呼ばれます )。それらは、航空機の後ろに残るコントレイルに似たもので、太陽光線を反射するので昼間でも一般に見ることができます。たくさんのしし座流星群の火球が昼間の時間に見られたと報告されていますが、我々はまだ昼間の煙痕の報告や写真は受け取っていません。

bust(失敗)か blast(出発)か?

 ルーマニア流星天文学協会のバレンティンGrigoreは、経験豊かな流星観測者で 11月16日17日にルーマニアのTargovisteでしし座流星雨を監視しました。暗夜での6時間の観測の間に、彼は193個が火球だった796個の流星を見ました。流星雨がルーマニアでピークに達したときは、1時間につき200+個の流星が流れ、その40 %近くはマイナス3等級より明るく輝きました。多くは木星やビーナスや満月より明るく輝きました。

 1998年のしし座流星群は、その1時間に流れた数が、毎秒40個流れた1996年の流星嵐にまで達っしなかったので、期待はずれだったと特徴づける人もいます。1998年のしし座のピークは、 今年始めのジャコビニ流星群の活動よりほとんどより素晴らしくはありませんでした。しかし今もなお、11月16日17日の暗夜に恵まれたバレンティンGrigoreと同じような我々の多くは、これまでで最もまぶしかった火球のショーを思い出します。

国際流星学会 は、1998年のしし座流星雨がいくつかの点で1966年の素晴らしい流星嵐に先行した1965年の流星雨に似ていることを示唆しています。それが正しいならば、今年のしし座流星群は、さらに素晴らしく壮観な来年の流星群の前兆であると言うことができます。或いは、別の意味では "bust"(失敗)なのかもしれません。それを確認する唯一の方法は、外に出て見上げることだけです!




原文 http://science.nasa.gov/newhome/headlines/ast27nov98_1.htm