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何よりもミッチェル・フォール飛行士は、破れたままのミール宇宙ステーションが地球の夜側に回り込む毎に訪れる闇の中の静けさを思い出します。 昨年６月２５日に貨物飛行船と衝突したミールはその電源が落ちてしまい、それまで騒々しく回っていた冷却ファンやその他の機器全てが停止して急に静かになりました。世界中が不安で心配しているさなか、フォールは静寂さを味わっていました。 「その時の静けさはファンタスティックでした。私は実際、静かになって欲しいと思っていたのです。そしていきなりそのような状況になったのです。」と彼は共同の記者達に語りました。 フォールは、あの痛ましい日やミールでの大変だった４ヶ月半の何もかもが鮮明に思い出される事に驚いています。 「まるで、そこにいるみたいに、ケーブルが目の前にあるかのように思い出すことができるんです。」と彼は語りました。 ４１歳の天文物理学者は、臭いという点では記憶に頼る必要がありませんでした。彼は偶然にも自分の家族の写真や小説を入れておいた２つのファスナー付バッグの中にミールの香りを詰め帰っていたのです。 「それを開けるとミールの臭いがしてくるんです。それは、古い図書館のような、それも年老いた人達が住んでいる図書館のような臭いです。そう、おばあちゃんとか、ひいおばあちゃんが住んでいるような旧家の臭いなんです。」と彼は言っていました。 フォールは、ミールを深刻な火災が襲った３ヶ月後の１９９７年５月に軌道上のロシアの旧家に赴任しました。その後さらに事態が悪化しようなどとは誰一人想像すらしていませんでした。でもそうなったのです。 １９９７年６月２５日、がらくたを満載した貨物飛行船がドッキング試験中にコースを外れ、スペクトル実験モジュールにぶつかったのです。太陽電池パネルは修復できないほど壊れました。もっとやっかいな事がすぐに起こりました、モジュールがパンクしたのです。 空気の漏れは小さく穴も隠れていたので、フォールとロシアの飛行士アレキサンダー・ラツキンは、速やかにハッチを通して曳いてあったケーブルを引き抜き、１０分以内で減圧している実験室を密閉しました。その間、バジリー・ツイブリヤフ船長は、乗組員はソユーズ脱出カプセルに非難するように規定されている飛行規則にもかかわらず、三人全員が船内にとどまるようにと固執しているロシアのミッション管制室と無線の応対を行っていました。 吐き出される二酸化炭素が自分たちの回りに漂って空気を澱ませ、窒息してしまうことを恐れたツイブリヤフ船長は、乗組員にミールが闇の中を飛ぶ時は他の乗組員がいつでも見える場所を見つけておくように命令しました。 ３人は衝突から４・５時間経って窓の前に集まりました。そこでは、オーストラリアのオーロラや南部の明かりが眼下できらめいていました。遠くで小さな隕石の閃光が見えました。衝突が起こった時に貨物飛行船をコントロールしていた船長は責任を問われるだろうと心配して落ち込んでいました。フォールは彼を元気づけようとしました。 「バジリー、窓の外は信じられないくらいに美しいよ。この所つらい日が続いている事はわかっているけど、僕は特にこの時をいつまでも覚えているよ。」とフォールは外を見つめながら言いました。「うん。うん。つらい日ばかりだったね。」とツイブリヤフ船長は答えました。 ------------ |