どこでインスピレーションが働くかはわからないものです。なぜなら科学者達は、常に研究開発を巧くやろうと考えているからです。
アイザック・ニュートンは、リンゴの木の下で何気ない40回のウィンクをしてリンゴの実の破片がそんなに重いモーメントを作らないことを知ったのかもしれません。 同じ事が、エルマー Aスペリーにも言えます。 エルマー は、子供のコマで遊び初めてその日じゅうをぼんやりコマを眺めていました。 コマがまわり回ると、ある閃きがエルマーの脳裏をかすめました。 彼は、高速で回転しているおもりの縁はその回転面にとどまろうとする傾向がある事に気付いたのです。 この発想は「空間の剛性」と呼ばれるもので、エルマーは、それが潜在的な可能性を秘めたものだと直ちに見抜いたのでした。 1910年、彼はスペリー・ジャイロスコープ社を設立して、初めは船を安定させる装置を設計しました。しかし彼はすぐに、もっと他の市場に参入できる事を知るようになりました。 初期の航空術では、飛行計測器は重りをつけた糸か翼の支柱どおしを結んだ絹のストッキングぐらいだったのです。 最高の飛行士でさえ、雲の中に入ると簡単にスピンにはいって操縦不能になりました。 それでスペリーは3つの重要な航空計器を開発しました。それは、旋回計とジャイロ・コンパスと人工水平器です。 それから80年後でも、窓の外が見えないときにパイロットに航空機の進路を保たせて操縦可能にするもっと良い方法を考えた人は誰もいません。 もしスペリーのジャイロスコープがなかったら、我々は主要な都市間の輸送機関には今もなお列車を使っていたかもしれません。そして我々が宇宙に行くなど、とんでもなく遠い先のことになっていたでしょう。 安定な状態と適切な姿勢を保つ為にあらゆる衛星がジャイロスコープを使っています。 先週、CNN、PBS、FOX、その他の多くのメディアが使っているジェネラル・エレクトリック社の通信衛星が、数時間も制御不能になりました。そのジャイロのうちの1つが故障したからです。 高エネルギーの粒子が、衛星の表面を貫通した事が明らかになっています。 数千マイル下方のハッブル宇宙望遠鏡も、科学ミッションを遂行するのに3つの異なった軸(ピッチ、ロール、ヨー)をもつ回転ジャイロを必要とします。 この望遠鏡には6つのジャイロがあり、およそ1ヵ月前まではそうでしたが、現在は3つだけが回転しています。 つまり天文学者や一般市民を感嘆させている10億ドルの望遠鏡は、ジャイロの1つでも故障したら 科学的に役に立たなくなるのです。 それで、NASAは当初来年6月に行われる予定のハッブル・サービスミッション No.3を2回に分けて行う事はその費用とリスクを支払う価値があると判断しました。 緊急修理3Aは、おそらく10月に行われるでしょう。 3Aでやり残された作業は、2000年後半に行われるハッブル修理3Bで完了されます。 政府の試算によると、この超過飛行はシャトルとハッブル計画におよそ7500万ドルを費やさせることになります。 NASAのハッブルの主任エドWeilerは、次のように考えるとこのお金も納得して使えると言っています。 もし望遠鏡が故障すれば、科学者達は国家の宝物がなくなっても毎月およそ2000万ドルの予算立てを要求するでしょう。望遠鏡が何かの発見をして学校の子供達の胸を踊らせているかどうかに関係なくです。 つまり、ハッブルに予定よりも8ヵ月早く到着するために7500万ドル支払うことでNASAは、レンズにキャップをかぶせたまま1億6000万ドル(2000万ドルの8ヵ月分)を支払わないでよいという保証を買った訳です。 エドWeilerはこのように言っています。 「科学のない3ヵ月が損益分岐点になります。」 「ねえ、あなたはお金を節約する為にお金を使うのでしょう。」 それが少くとも、私の妻が私に話し続けたことです。 ところで、ジャイロは何故故障したのでしょう? 誰も確かな事は解りません。 しかし、Weilerは、結果論ですがNASAは1997年 のハッブルの往診の時にジャイロを取り替えておくべきだったと認めています。 それらは、1993年の最初のサービスミッションで取り替えられた物です。それらは回転軸が粘性の液体の中で回転する旧式の機械式ジャイロで、良好な状態であるのは一般的に4〜5年だと思われています。 「空間の剛性」は岩のように堅い法則であるかもしれませんが、柔軟性もまた便利な事です。 ----------------------------------------------------------------- 詳細は必ず下記のページで御確認ください。 http://www.cnn.com/TECH/space/9903/15/downlinks/index.htmlindex.html |