序文
毎年晩秋の11月17日か18日の夜明け前の静寂な数時間、熱心な流星観測者達は空を見上げてじっと夜を明かします。 まだ暗くて寒い早朝に空にはもうすっかり春の星座が輝いています。東の空に星座の先頭に登るのは獅子座です。獅子座はおおがまの形をした星座としてよく知られており、クエスチョンマークの逆向きの形にも似ています。この2日間は特におおがまのカーブした刃の部分が重要です。そこが流星雨の輻射点だからです。 ほとんどの時間は何も起こりません。時折、寒さに耐えて毛布にくるまって横たわっている流星観測者達が、空のどこかで飛ぶ流星の方向が、おおがまの中にある見えない輻射点と一致するのかを見る為に動くだけです。おそらく流星観測者達のクリップボードには、一時間に8個から10個の獅子座流星の数が記録されているでしょう。夜明けが訪れる頃、彼らは時計を見て最後の記録を付けて起きあがり、その夜に集めたデータに満足しながら、いつも言うのです。「今年もだめだったね。」と。 ところが見えない太陽系の外では、流星体の大群が、太陽の周囲に突進する準備を進めています。おそらく細く長く伸びている大群の中の最も密な部分として知られている所が速度を増しながら、毎年11月17日と18日に地球が通過する地球軌道との交点へ向かっているのです。この部分が、最後に地球に正面から突っ込んだのは1966年でした。我々の地球の進行方向の高層大気圏は、獅子のおがまから降る火の雨の様な流星雨で燃え上がったのです。 いまこの大群が再び我々の方へ向かっているのです。これから数年間は再び我々にぶつかって光の縞で空を焦がすのか、それとも地球の一方をかすめて何も見えないのかとささやかれるでしょう。 でも、すでに良い兆候が現れています。流星の極小期としてほとんど出現しなかった20年間を過ぎた1994年に、獅子座流星群の活動が強くなっている事が検出されたのです。1994年の獅子座流星群の出現割合は、通常の年のペルセウス流星群や双子座流星群をリードする程でした。これから数年間の11月17日と18日に何が起こるのか、皆が推測することでしょう。しかし、我々は生涯のショーを目の前にしているのかもしれません。 |