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スペースシャトル豆知識
「打ち上げ窓」って何?
シャトルのミッションを可能にする為の色々な条件から計算された打ち上げ可能時間の幅(マージン)です。条件には、緊急着陸地が昼間であることなど地上側の要素もありまますが、大きな影響を受けるのはミッションの目的地、例えばハッブル宇宙望遠鏡、ミール、国際宇宙ステーションの位置関係です。通常は打ち上げ時刻は打ち上げ窓の最も早い時刻が設定され、必要があれば問題解決の為にこの窓(マージン)が使われていきます。
0秒より少し前(6.6秒前)にメインエンジンが点火するのは何故? 個体ロケットブースターSRB は一度点火すると止める事はできませんが、メインエンジンは点火後でも停止する事ができます。つまりメインエンジンは点火後に不調だとわかったら打ち上げを中止する事ができるのです。ですから0秒でメインエンジンと個体ロケットブースターに同時に点火していきなり打ち上げるよりも少し前(6.6秒前)に点火してみてエンジンのチェックを行った方がより安全だからです。 では何故6.6秒前なのでしょう。メインエンジン点火の衝撃と反動で打ち上げ台のシャトルは外部タンク側に少し傾きますが、6.6秒後にまた垂直に戻ってくる事が事前に解っています。つまり6.6秒前にメインエンジンを点火すればSRBを点火する0秒の時にはシャトルは垂直になっているからなのです。
メインエンジンが点火した時にシャトルが浮き上がらないのは何故? 打ち上げ6.6秒前にメインエンジンが点火してもシャトルは発射台に乗ったままで浮き上がりません。何故でしょうか。実は個体ロケットブースターが発射台に巨大なナットでしっかりと固定されているからです。このナットは爆薬入りで0秒で爆破されます。ナットが外れて初めてシャトルは地上からフリーになります。 シャトルの発射台の横にある巨大なタンクは何?
シャトルの発射台の横には巨大なタンクがあります。写真参照
打ち上げ10秒前にシャトルの底部で吹き上げる火花は何? メインエンジンの点火は打ち上げ6.6秒前と言いましたが、中継を見ていると10秒前に大きな音がしてエンジンノズルの下方から火花が吹き出すのが見られます。あれはエンジンが点火したのではありません。FREE HYDROGEN BURN OFF というシステムが点火した火花です。これはメインエンジンから漏れ出した水素ガスが溜まって爆発するのを防ぐ為のものです。漏れ出した水素ガスをこの火花で燃焼させ爆発の危険を避けるのです。 シャトルは何故打ち上げ直後に回転して背面になるの? シャトルは打ち上げ直後にくるっと回転して背面になるアクロバット飛行のようなことをします。何故あのような危険な飛び方をするのでしょう。これには2つの理由があります。 まず第一に、緊急時にシャトルの船長とパイロットがすぐに地上を見ることができるようにシャトルを外部タンクの下側にする為です。外部タンクの上にシャトルが乗った姿勢で飛行するとシャトルの窓からは地上が見えないのです。上昇中に緊急事態が起こったら船長とパイロットは直ちに窓から地上を見てシャトルの姿勢を判断しなくてはなりません。でもそれだけだったら別に回転する必要はありません。シャトル側に傾いて飛行すればよいはずです。回転が必要なもう1つの理由があります。 ミッションに必要な軌道に乗るためにはシャトルはおよそ東の方へ機首を向けて飛行する必要があります。ところがシャトルは南の方に背を向けてしか発射台にのせることができません。これは発射台の構造上の理由ですが、もともと発射台はシャトル専用に作られた訳ではないのでそれはしかたありません。したがって東へ機首を向けてかつシャトルを下側にして飛行させるには、打ち上げ直後に回転するしかないのです。 中継の画像は普通シャトルがよく見えるように南側から撮られています。画面右側が東になります。シャトルが打ち上がるとすぐに背を右側にむけるように回転するのがわかります。シャトルとヒューストン管制室との交信はこのロールの確認から始まります。ところでシャトルは、タワークリア(発射台を離れる)からケネディー宇宙センターに着陸して車輪が停止するまでは、ヒューストンの管制室と交信します。その前後はケネディー宇宙センターの管制室と交信しています。NASA-TVの中継もシャトルが発射台を離れるとヒューストンにいる解説アナウンサーに交代しています。 シャトルは自爆装置を積んでいるって本当? 本当です。フロリダから打ち上げられる全てのロケットにはアメリカ空軍のレンジ・セーフティー・オフィサーと呼ばれるチームによって飛行停止システム(FTS)いわば自爆装置が取り付けられています。不幸にしてロケットのコントロールが効かなくなり都市部の方へ飛行を始めたら彼らによって自爆釦が押されるのです。有人ロケットのシャトルも例外ではありません。外部タンクと個体ロケットブースターにダイナマイトが仕掛けられています。これまでにシャトルの打ち上げで自爆装置の釦が押されたのはチャレンジャーの事故の時だけでした。事故そのものが外部タンクの爆発だったのですが、飛び続ける個体ロケットブースターは自爆装置により爆破されました。シャトルの打ち上げは本当に命がけなのです。 シャトルが着陸前に出す大きな音は何? シャトルの着陸をNASA-TVなどで見たことのある人は聞いたことがあると思いますが、着地5分くらい前に大きなドカーンという音が2回します。一瞬爆発が起こったのかと不安になりますが、あの音はシャトルの速度が音速を下回る時に出すソニックブーム(衝撃波音)です。この音は機首と翌からでる為に2回音がします。今度はこの音に注意してみてください。
何故シャトルは着地ぎりぎりまで車輪を出さないの?
旅客機は着陸のかなり前から車輪を出しますが、シャトルは着地寸前まで車輪を出しません。
再突入の時シャトルは地上と交信できないの?
映画「アポロ13」では、飛行士を乗せたカプセルが大気圏に再突入してパラシュートが開くまでの交信途絶(ブラックアウト)がクライマックスとなりました。
シャトルはパラシュートがないと停止できないの?
軍用機が短い滑走路に着陸する時は、着地後にパラシュート(ドラッグシュート)を開いて引っ張り制動補助とします。
気象条件に関するシャトルの打ち上げ規則 燃料充填24時間前の平均気温が41度F以上であること。 充填後に秒読みが進められる為には気温が99度F以下であること。 風 発射地点での風向きが300度から60度の時の最大許容風速は、秒速17.5m以下である。 発射地点での風向きが60度から150度の時の最大許容風速は、秒速10.3m以下である。 瞬間最大許容風速は風向きが60度から150度の間では、秒速17.5mから秒速10.3mへ減少していき、風向きが200度から300度の間では、秒速10.3mから秒速17.5mへ増加していく。 上層大気に関する最終勧告は、JSCからKSCに対して打ち上げ30分前に行われる。 上空の風がシャトルの飛行に悪影響を及ぼすと決定されてから30分以内は打ち上げを行うことはできない。 降雨 発射地点または予定飛行経路に降雨がないこと。 稲妻・電場 稲妻が発射地点から18.5Km以内にないこと。 稲妻源が打ち上げ前30分以内に発射地点または予定飛行経路より18.5Km以内にないこと。ただし稲妻源が時速8.5Kmで遠ざかっている場合はこの限りでない。 打ち上げ前15分以内において発射地点より9.3Km以内で電界測定ネットワークシステムの1分間の平均値が1KV/mを越えないこと。ただし、18.5Km以内に雲がなかったり、スモッグなどで測定値に以上があると認められた場合はこの限りでない。 雲 シャトルの予定飛行経路に、温度が0度Cから-20度Cでかつ雲厚が1350m以上の雲がないこと。 予定飛行経路より9.3Km以内において、温度が度Cから-20度Cになるような乱れた雲がないこと。 予定飛行経路に打ち上げ前3時間以内に、雷雲より分離した黒い雲、あるいは、予定飛行経路より9.3Km以内に雷雲より分離した雲がないこと。または、レーダーで雨の影が見つからないこと。 TAL大西洋横断中止 乗組員がTAL中止ボタンを押すとシャトルは横転して外部タンクを下(ヘッドアップ・ポジション)にします。シャトルはそのまま前方に飛行し、TAL着陸基地まで滑空できる範囲に入るとエンジンをカットして外部タンクを切り離します。 TAL大西洋横断中止は、打ち上げ後35分で全てが終了するミッションです。 | |
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